今回は知的財産権以外の模倣対策の手段・要素をお話しします。
いつもアイデアや技術などを特許や商標権などの知的財産権で守る話をしていますが、あくまで事業を総合的に捉えて模倣対策を考えるべきです。
正直なところ、事業上知的財産権だけでは不十分なケースが大半なので、今回の話は絶対知っておいていただきたいです。
私(弊社代表の草野)は自社で通信確立ドローンという新しいドローンの研究開発をしてますので、特許といった知財の面は当然そうですが、それ以外のこともたくさん考えてきたので、それらを今回は起業家の視点でお伝えします。
本題に入る前に前提事項をお伝えします。
知的財産権による模倣対策は権利侵害に基づく違法性を主張できることが前提にあります。
特許侵害、商標権侵害といった権利侵害の主張です。
今回お話しすることは、権利侵害に基づくものではなく、主に強みを構築したり活用したりすることで、模倣対策をするという意味になります。差別化ともいえます。
他社に模倣をやめて下さいと主張するものではないので、知的財産権とは性質が異なります。
それでは主な模倣対策の手段・要素を17つご紹介していきます。
数が少し多いですが、それぞれ簡単にお伝えします。
ぜひ最後までお読み下さい。
各項目同士で意味が少し被る部分もありますが、視点を変えてお伝えしていますので、その点はご了承下さい。
1.ファン・フォロワー
ファンやフォロワーは、人、企業、キャラクターなどに対して親しんでくれたり、応援したりしてくれる存在です。
特にファンに一度なってもらえると離れにくいです。
商品・サービスを買ってくれやすいですし、口コミをしてくれるとてもありがたい存在です。
例えば、キングコングの西野さんや講演家の鴨頭嘉人さんは熱烈なファンが多いですね。
その方々が販売しているものだから買うといった状態を作れると非常に強いです。
キャラクターに関しては、うまくキャラ設定やストーリーを作っていくことが重要です。
例えば、ふなっしー、くまモン、孫悟空などは多くの人に親しまれています。
親しみやすいキャラクターに関係する商品やサービスは多くの人に買われます。
また、個人や企業におけるSNS、YouTubeのフォロワーやチャンネル登録者も同様に商品・サービスの売行きに大きく影響します。
SNSやYouTubeなどで有益な情報の提供や魅力ある発信をしているとフォロワーやチャンネル登録者が増え、この人・この企業が勧めるものなら買いたいという人が増えていきます。
ファンやフォロワーをしっかり定着させることができれば、似たような模倣品が出てもそっちには見向きもしないわけです。
2.ブランド
ここでいうブランドは高級品だけではありません。
経営の学校のグロービスによると、ブランドは、顧客と企業の共通の認識です。例えば、イメージ、識別力、デザインです。
身近な例を挙げると、松屋やサイゼリヤなどは自然と多くの人が足を運びます。
私もよく行きます。安くて美味しいものを食べられるという共通認識があると思います。
そういう共通認識を構築できれば、自然と多くの人に選ばれます。こういったブランドを確立できれば選ばれ続けるので、模倣されても影響は少ないわけです。
3.営業・マーケティング
営業やマーケティングが強いと商品・サービスが他社と同じようなものだとしても大きな差が出ます。
商品・サービスの質やスキルはもちろん大事ですが、営業力で大きく差がつくのも事実です。
また、マーケティングは、様々な手法があります。
例えば、広告でいうとリスティング広告、テレビ広告、SNS広告などがあります。
他にはSEO対策、YouTube、プレスリリース、展示会への出展など、見せ方や見せる場面やタイミングは非常に重要です。
営業力やマーケティング力が強ければ模倣品が出ても売れなくなりづらいといえます。
4.人的ネットワーク
人的ネットワークは平たくいうと人との繋がりや人脈のことです。
人脈をうまく活用して販路を作って商品・サービスを広げていくことはとても有効ですし、場合によっては大きな差が生まれます。
商品・サービスを模倣されたとしても、人脈によって他社には真似できないような販路を作れるのであれば売れなくなりづらいです。
5.実績
実績は信用として積み上がってくので、自然と顧客から選ばれるようになります。
長い間続く企業や実績のある人が社長をやっている企業は安心感がありますよね。
なので、顧客は模倣品が出ても自然と実績がある人や企業から買うということになります。
6.仕入れ
例えば、独自の仕入れルートがあり、安く高品質なものを仕入れられるというのは大きな強みです。
他社にはない良い条件で仕入れができれば、他社が商品・サービスを模倣しても価格や品質に差をつけることができます。
7.価格
主に安い価格での販売を意味しています。
「6.仕入れ」でお伝えした有利な条件での仕入れによって低価格を実現したり、うまく業務の一部か全部を自動化して人件費を下げるなどしてその分価格を抑えることが可能になります。
他社に模倣されたとしても同じものを安く販売できれば当然自分達が有利ということになります。
8.データ
データとは例えば、顧客リスト、実験データ、購入履歴などのビックデータなどがあります。
データは資産なので非常に価値があります。
データも知的財産の一種です。
データは、営業やマーケティング、商品開発といった色んなことに役立ちます。
表面的に商品・サービスを真似されても、データ量が違えれば事業の色んなところで差別化することができます。
9.人材
当たり前のことかもしれませんが、事業や商品・サービスを作ってるのは人なので、どこまでいっても人は欠かせません。
優れた人を集めれば優れた商品・サービスや事業を構築できます。
なので模倣しようと思っても同じクオリティで実現できません。
例えば、世界的に有名なネットフリックスはもの凄い有能な人材を集めるために高い給料を払い、それによって高品質なサービスを実現しています。
10.社員教育
社員教育では社員のスキルを高めたり、考え方、マナー、マニュアルについて教えるといったことを行います。
教育をしっかり行えば当然社員の力が高まるので、優れた商品・サービスが生まれ、模倣しようとしても同じクオリティで実現できないということになります。
どれだけ社員に充実した内容の教育をできるかで大きな差が生まれます。
11.社風
社風には例えば、会社の文化、環境、価値観といったものが大きく影響します。
例えば、ゴールドマンサックスのような一流の外資系企業では徹底的に成果や完璧を求められます。
あるいはネットフリックスのようにルールを極力無くし、自由だけど責任があるという体制にしている企業もあります。
商品・サービス自体は模倣できたとしても、社風はなかなか模倣できないので、社風自体が強みであれば事業のあらゆるところで差別化が可能になります。
12.技術・ノウハウ
独自の技術やノウハウがあるというのは大きな強みです。
ここでは主に社内だけで使われている技術やノウハウを指します。
例えば、有名なコカコーラの話でいうと、レシピをごく一部の人にだけ開示して秘密の状態を貫いてきました。
コカコーラは、ある程度の模倣はできるかもしれませんが、全く同じものは他社では作れないようにしてきました。
それにより長年コカコーラの独自性が維持されてきました。
もし特許を出していたら、レシピが世の中に公開され、特許が切れた後にすぐに真似されていたことでしょう。
(特許を出すと原則1年半後に内容が公開されます)
13.開発・生産体制
開発・生産体制によって、品質、安さ、付加価値といったことで差別化することができます。
例えば、日本でトップレベルの優良企業であるキーエンスは企画・開発は自社で行い、一方で自社工場を持たず、国内外の協力会社に外注して製品の製造を行うファブレス経営をしています。
それによって柔軟にかつスピーディにクライアントに合った付加価値の高い製品を作り上げています。
弊社がお世話になってるものづくりの企業様は、外国に生産工場があり安い原価で、かつありとあらゆるものを設計して作れるという開発・生産体制を誇っています。
商品・サービスを模倣されたとしても、開発・生産体制で有利になれれば差別化することが可能になります。
14.国の機関・自治体との取引・連携
国の機関・自治体といった公的な組織と取引・連携をすると大きな信用になりますし、一度契約をすれば関係が解除されにくいというメリットがあります。
そのことが参入障壁になって、他社に商品・サービス自体を模倣されても影響が少なくなります。
15.有力企業との連携
現在の世の中では一社だけの技術や知見、人材といったリソースだけでは、差別化することが難しく、簡単に模倣されることが多いです。
逆にいえば、複数社のリソースを組み合わせることで複雑になるので、模倣されずらくなります。
弊社も、他の会社と共同で開発を進める形で連携させていただいてますが、それによって特に技術・人材の面で差別化を図っています。
16.ネットワーク効果
ネットワーク効果を活かすには、人が集まれば更に人が集まる状態を作ることが重要です。
つまり、利用者が増えるとサービスの価値が高まるというものです。
よく知られている分かりやすいサービスだとYouTube、Twitter、メルカリ、Amazonなどが挙げられます。
Amazonやメルカリで考えると、商品を売る人が増えれば色んな商品が増え、買う側にメリットが出て買う人が増えます。
そうすると、売る人がまた増えて買う人も喜んでまた増えることになります。
利用者がどんどん増えていく流れを作ることは容易ではないですが、この流れを作ることができれば仕組みを模倣したとしても追いつくことができません。
17.M&A
M&Aでは買収する側も、売却する側も両方とも模倣対策になり得ます。
例えば、似たような事業をしてる会社があった場合に、早いうちに買収して仲間にしてしまう形です。
例えば、Amazonはよく企業の買収を行います。
似たような事業でなくても、シナジーが出せる企業であれば、買収してリソースを組み合わせて差別化すれば模倣しづらくすることができます。
売却する方としては、例えば自分達の事業と似たことを大手企業がやろうとしている場合に傘下に入るといった形です。
大手企業としても、ゼロから自分達で事業を立ち上げるというのは時間もお金もかかるので、それなら買収した方が話が早いというケースはよくあります。
売却する側の企業は素直に買収に応じて、模倣される前に傘下に入って仲間になれば模倣を防止できるということになります。
以上となります。
最後に今回お伝えした17つの内容を列挙します。
1.ファン・フォロワー
2.ブランド
3.営業・マーケティング
4.人的ネットワーク
5.実績
6.仕入れ
7.価格
8.データ
9.人材
10.社員教育
11.社風
12.技術・ノウハウ
13.開発・生産体制
14.国の機関・自治体との取引・連携
15.有力企業との連携
16.ネットワーク効果
17.M&A
今回は模倣対策の主な手段・要素をお伝えしました。
これらの項目は、人や企業によって適したもの・適していないものがあると思いますので、適したものを取り入れて更に複数組み合わせることで、模倣対策・差別化を図っていけば良いかと思います。
もちろん、特許などの知的財産権とも組み合わせるとより強力になります。
ぜひ今回お話しした手段・要素を検討して取り入れていただければと思います。
弊社では、このように幅広い視点でビジネスの物事を考え、その上で知財をどのように活用していきます。
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